子育てブギウギ

私はずっと独身で、結婚・出産・子育ての経験はいずれも皆無だが、先々週と先週のブギウギの放送でのスズ子と愛子の母子関係について、どうしても引っ掛かっている事があるので、書いてみたいと思う。これから書く事について、気になった人は少なくないと思うので、ある程度は賛同してもらえるものと思う。

まず気になったのはザックリ言って一部、先々週と先週の話の構成が似ていたという事だ。スズ子に新しい仕事の依頼がある→愛子のお守りはどうしようか→麻里さんに頼っていいと言われるが、迷惑をかけると思い断る→職場に連れて行くが結局迷惑をかけ、仕事の進行に支障が出る→芸能記者の鮫島の茶々が入る→何とか仕事は終わるといった辺りだ。

先々週はパンパンガールや元締めのおミネさんやタイ子母子が出てきたのに対し、先週は茨田さんとのちょっとしたイザコザと、茨田さんの計らいで家政婦さんが来るという違いはあるが、うまくまとめた印象はあるものの、伝記ドラマで大抵の朝ドラでは飛ばしがちなイヤイヤ期や、子育てで人に頼るのは良しや否やに、2週も使うのはどうなの?と思ったのも正直なところだ。

落ち度がないのに怪我をさせてしまったスタッフや、撮影が遅れた事について他のスタッフ達が、映画の試写をする頃には、そう簡単に忘れてるものかしらと思うし、出会った当初はスズ子に、あれだけ厳しい態度をとっていたタナケンさんが、都合良く物分かりが良くなってしまった印象も否めない。そして、あの時代の売れっ子芸能人の働くシングルマザーなら、もっとスンナリ子守や家政婦さんを頼む話にしても良かったんじゃないかと思う。

此れはいつも観ている私の母親の意見だが、愛子役の子が体格が良くてイヤイヤ期の子に見えなかったと言うのだ。私も多少それは感じた。もっと上の年齢まで演じてもらう都合だとしても、「おいちい」とか言っているのも少し不自然に感じた。女の子だし、障子を破きまくったり粉被ったりしてたのを、スズ子はヤンチャだと評してたが、あれは構ってちゃんでワザとやった様に見えた。その時の撮影時の現場に、小さい子の事をよく分かってるスタッフがいなかったとしか思えないんだが。

現代の話だが奇しくも先々週の「おっさんずラブ」も、イヤイヤ期の子の処遇がテーマだった。春田と牧がシングルマザーの友人が体調を崩した為、彼女の3歳の息子を預かるが、聞かん気の暴れん坊怪獣でテンヤワンヤという場面もあった。此方の子役は3歳の子に見えたし、子役の子も芝居が上手だった。彼が春田や牧に何だかんだありながら、馴染んでいくと流れもとても自然だった。

でも1番良かったのは友人の女性が、子育てでいつも頼りっ放しの兄夫婦が海外旅行に行ってるので、迷惑をかけたくないから、連絡をしないでくれと春田に頼んだものの、お土産の事を聞いても返信がないのを心配した兄が、春田にメールをした時に、春田が彼女が入院してると送信してしまい、兄夫婦一家が早めに帰って、病院に駆け付けた時の兄嫁の言葉だ。

兄嫁は「迷惑をかけたくない、心配をかけたくないからという理由で、頼ってもらえないのが一番迷惑よ」と言った。全くその通りだと思った。それ以上迷惑な事はない。私もそういう理屈で、周りの人達に迷惑をかけまくって来た人間なので、ドラマの台詞なのに耳が痛かった。

人は全く人に迷惑をかけずに生きていく事は出来ない。日本人は迷惑をかける事が悪い事だと、必要以上に気にしがちなところがあると思うが、迷惑をかける事自体が悪いのではない。にっちもさっちもいかなくなるまで無理をする前に、人を頼る事は全然悪い事ではないと思う。そういう意味で、とても上手い話の構成だったと思う。一見ドタバタのラブコメでありながら、子育て話を上手くまとめてたという例になっていた。

だから朝ドラのスズ子も素直に麻里さんの御厚意に甘えたり、ずっと一緒に居たいからと我儘など言わず子守を頼んで欲しかったし、自分で家政婦を手配して欲しかった。麻里さんにも誰にも迷惑をかけたくないと言って、職場に子供を連れていった結果、どれだけマネージャーの山下さんや、仕事仲間やスタッフに迷惑をかけた事か。

その度に申し訳ないと謝ってたが、それならお世話する人を頼めば良い訳で、まさしくおっさんずラブの兄嫁さんの台詞に合致してしまった訳だ。迷惑かけちゃ申し訳ない、そういうのが一番迷惑なのだ。そういう風に描けば良い母親に見えるだろうという狙いだったならば、その狙いは全く失敗だったと言わざるを得ない。

現代でもシングルマザーを取り巻く状況は厳しいが、ドラマの中とは言えスズ子は貧しい庶民ではない。ちゃんと家があって助けてくれる人もいる女性の行動としては、あまり説得力のある描き方だったとは言えない。俳優の演技は上手いと思うが、芸能記者鮫島は都合良く扱われ過ぎだと思う。芸能雑誌は何とか婦人しか無いのか、芸能記者は鮫島しかいないのか、鮫島は福来スズ子や茨田りつ子の事しか取材してないのかとか、妙なツッコミを入れたくなってしまう。

朝ドラでは主人公の子供の話になると、それまでは良くても、話が微妙になりがちという例はよくあるので、今回も御多分に漏れずというところかもしれないが、それでも、こういう話に2週も使われてもなという印象は拭えない。歌手の話なのにスズ子と愛助の恋愛話にも、私生活の事なのに回数を使い過ぎだと私は思っている。

意地悪な見方をしてしまうと、恐らく美空ひばりさんモデルとの絡みや、ジャニー喜多川モデルの人が出てくる様な話が出来なくなったので、代わりに引き延ばす要素が必要だったんだろうと思うが、基本朝ドラはホームドラマで家族の話で、ドキュメンタリーではないのだから、家族の話で膨らますなとは言わないが、歌手として一世を風靡した人も1人の人間だという事を強調したいんだとしても、何か違うよなあと思ったというのが結論だ。

とは言え今回は批判ばかりになってしまったが、ブギウギは概ね面白いドラマだと思って観ている。趣里の歌やパフォーマンスは文句なく素晴らしい。彼女に責任はない。スタッフに物申したかっただけだ。もう後一か月ほどを残すのみの本作を、最後まで楽しく見届けたいと思う。

 

 

 

身代わり忠臣蔵

ムロツヨシの大ファンである私、待望の彼の主演映画である「身代わり忠臣蔵」を観てきた。映画大好きなのに、映画館で観るのは何だかんだで実に約半年ぶり。

彼の主演或いは準主演映画は、「マイダディー」や「神は見返りを求める」もあるが、粗筋だけ読んで、ちょっと此れは理不尽過ぎて耐えられんなと思いパスしていたのだ。

だが本作は、「超高速参勤交代」や「引っ越し大名」と同じ作者の作品という事で、絶対に面白いに違いないと思って迷わず観に行った訳だが、此れが予想以上に面白くて、特に終盤の、ネタバレになるから具体的には言えないが、まさかソレでアレをするとはというところで、もう笑いが止まらなかった。要はナンチャッテ時代劇ではあるが、討ち入りの場面等は本格的に撮られていて、緩急と言うか、思った程ハチャメチャ感はなく、意外にメリハリがある感じがした。

SNS等でムロツヨシで検索すると、ムロツヨシムロツヨシだったとか、ザ・ムロツヨシだったというコメントをよく観る。そういうコメントに、ファンとしてはたまにカチンとくる事もあるが、本作に関しては、そう言われても、全く異論はなしという感じだった。

それは何をやっても同じとかワンパターンとかいう事ではなく、彼の十八番でもある、がなり立てる系の3枚目演技も、シリアスな演技も2枚目演技も、彼が魅力を最大限発揮できる要素が、全て詰め込まれていたという事だ。基本は舞台人であるから声が大きいし、オーバーアクトになる事もあるが、騒いでない演技の時でも声が通る。此れは彼のファンの人なら同意してくれると思うんだが、イケメンでイケボであるから、カッコよくあるべき時には、最高にカッコ良く魅せてくれる役者である。

そんなムロツヨシに対して長年の盟友である永山瑛太や、林遣都川口春奈寛一郎柄本明さん等の芸達者な俳優さん達が、息の合ったお芝居で応戦してくれて、沢山笑わせてくれて、ちょっとジーンとして痺れてキュンとも出来る。

映画のストーリーは基本は史実に沿っているし、オチが変わる訳でもないのだが、最後までどうなるか分からない楽しみに溢れた映画だった。

 

本作は公開から間もなく、未だ当分公開されてると思うので、具体的な内容には触れないでおくが、終盤のアレでソレで笑わずにいられる人はまずいないと思うし、ムロツヨシだけはどうしても苦手、という人以外なら文句なく楽しめると思うので、皆さんも是非映画館で御覧になってみてください。